繋がる〜月の石の奇跡〜
目を丸くして井上の方をじっと見つめているえみに、
「わりぃ。無ければ水もらえる?」
遠慮がちに言った。

えみは、目を閉じると同時に深く呼吸をする。
そしてゆっくりと目を開けて、目の前にいる井上を確認する。

えみは、小さく息を吐いて、
「ううん。違うの。ちょっとびっくりしちゃって。私もとんかつ食べるときに牛乳飲むから。」
気持ちを切り替えて井上に言った。

「今牛乳切らしてて、それで、さっきコンビニまで牛乳を買いに行こうとしてたの。」
えみは落としたペットボトルを拾いながら動揺を隠すように言った。

井上も一瞬驚いた表情をして、
「俺たち変わり者どうしかもな。」
優しい眼差しでえみを見ながら答えた。

そのとき、えみはなんとも言えない懐かしい気持ちになっていた。
『なんだろう。この気持ち』
モヤっとした胸に右手を当てる。

「じゃぁ、俺今から牛乳買ってくるよ。ちょっと待ってて。」
椅子から立ち上がり、井上が部屋の外へと出て行く。
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