繋がる〜月の石の奇跡〜
すると、そこには大谷が立っていた。

「えーみちゃん!」
少し酔っているのか、大谷はいつもよりも目尻が下がった笑顔で、えみの顔を覗き込んできた。

「こんばんは。」
えみは控えめに会釈をする。

「暇だったら、今からでもこっち遊びに来ない?サークルのメンバーも紹介したいし。」
大谷の部屋の方を指差して言った。

「えっと。」
えみが返答に困っていると、大谷の部屋の近くに井上の姿が見えた。

「あ。」
井上の方を見て、えみは思わず声を出す。

大谷はその様子を見て、後ろを振り返り、井上がいることに気がつく。

「おお。井上。どこに行ってたんだよ。お嬢様がご立腹たぞ。」
茶化すように言った。

井上は、牛乳が入っているだろうビニール袋を片手に持っていたが、えみの部屋の方には来ることはなく、そのまま大谷の部屋へと入っていった。

「なんだあいつ。相変わらずつれないなぁ。」
閉じるドアを見ながら大谷が言った。

「すみません、今日はもう遅いし遠慮します。」
えみはそう言ってドアを閉めた。

えみは居た堪れない気持ちになり、しばらくドアに寄りかかって立ち尽くした。
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