繋がる〜月の石の奇跡〜
その日の放課後、えみは夏休み前のテストに向けて大学近くのカフェで勉強をすることにした。
図書館へ行こうかとも悩んでいたが、テスト前はほとんどの席が医学生で満席となるため行かないようにしていた。
同時間頃、井上は図書館へと行っていた。
井上は何となく席の全体を見渡してから、空いている席に腰掛け勉強を始める。
えみは、カフェでブレンドコーヒーのラージサイズを注文し、砂糖とミルクをたっぷり入れて席に着く。
もう夏で暑い日が続いたが、えみは決まってホットコーヒーを注文する。
今日のコーヒーは、以前井上がくれたコーヒーの味によく似ていた。
えみは、不意に井上のことを思い出す。
『井上くん、今何してるかな。』
井上のことを考え始めると、勉強が全く手につかなくなってしまった。
『この気持ち何だろう。』
『井上くんのことをもっと知りたい。』
えみにはその気持ちにどんな意味があるのか分からなかった。
元彼の光輝と似ている井上の存在にえみは戸惑っていた。
いてもたってもいられなくなったえみは、本やノートをカバンの中へとしまい、コーヒーを一気に飲み干して店の外へとでる。
そして足早に大学の図書館へと向かった。
えみの予想通り、図書館は医学生でいっぱいになっている。
えみは、たくさんの人がいる中で井上のことを探す。
井上の姿はどこにもない。
そんなとき、ゆりこの姿がえみの目に飛び込んできた。
『大倉さんだ。』
その近くに井上がいるかと思い、周辺をよく見渡したえみだったが井上はいなかった。
えみはがっかりしたと同時に、安心もしていた。
『見つけても話すことないし。』
自分でも何がしたいのか分からないこの状況に、いたたまれない気持ちだけが大きくなっていった。
えみは、図書館の外へ出て、近くにあるベンチに腰を掛ける。
夜空を見上げると、今日も綺麗な月がぼんやりと輝いていた。
『井上くんと話したいな。』
そっと心の中でつぶやく。
「何してんの?」
すると、横から声が聞こえた。
「え?」
えみが声が聞こえてきた方を見ると、そこには井上の姿があった。
その瞬間、何とも喩え難い感情が溢れて、えみの目からは涙がこぼれた。
涙は止まることなく、月明かりに照らされて美しく流れ出る。
その様子を見た井上は、戸惑いながらもえみの頭にポンと掌をのせる。
「どうかした?」
井上が優しく尋ねる。
えみは、鼻を啜りながら下を向いて答える。
「井上くんに会えてびっくりしたの。」
意外にもえみの口からは真っ直ぐで素直な気持ちが出た。
井上は、えみの頭の上の手を左右に動かし優しく撫でる。
その時、
「圭くん。」
図書館の方から声が聞こえた。
そこにはゆりこが二人の方を見て立っている。
えみは慌てて立ち上がり、井上の手を振り払う。
「そろそろ帰ろう?」
ゆりこが井上に話し掛ける。
えみは慌てて
「彼女のこと送っててあげて。」
そう言いながら別の方向へと歩き出そうとした。
すると、井上がえみの手をばっと掴む。
「もう暗いから送ってくよ。」
えみは、ゆりこのことが気になって井上の手を振り払う。
「ありがとう。でも大丈夫。」
そしてえみは別の方向へと歩き出した。
井上はえみの姿を目で追う。
「圭くん。あの子誰?どうかしたの?」
ゆりこが井上に尋ねる。
「何でもない。」
そう言うと井上は正門の方へと歩き出した。
図書館へ行こうかとも悩んでいたが、テスト前はほとんどの席が医学生で満席となるため行かないようにしていた。
同時間頃、井上は図書館へと行っていた。
井上は何となく席の全体を見渡してから、空いている席に腰掛け勉強を始める。
えみは、カフェでブレンドコーヒーのラージサイズを注文し、砂糖とミルクをたっぷり入れて席に着く。
もう夏で暑い日が続いたが、えみは決まってホットコーヒーを注文する。
今日のコーヒーは、以前井上がくれたコーヒーの味によく似ていた。
えみは、不意に井上のことを思い出す。
『井上くん、今何してるかな。』
井上のことを考え始めると、勉強が全く手につかなくなってしまった。
『この気持ち何だろう。』
『井上くんのことをもっと知りたい。』
えみにはその気持ちにどんな意味があるのか分からなかった。
元彼の光輝と似ている井上の存在にえみは戸惑っていた。
いてもたってもいられなくなったえみは、本やノートをカバンの中へとしまい、コーヒーを一気に飲み干して店の外へとでる。
そして足早に大学の図書館へと向かった。
えみの予想通り、図書館は医学生でいっぱいになっている。
えみは、たくさんの人がいる中で井上のことを探す。
井上の姿はどこにもない。
そんなとき、ゆりこの姿がえみの目に飛び込んできた。
『大倉さんだ。』
その近くに井上がいるかと思い、周辺をよく見渡したえみだったが井上はいなかった。
えみはがっかりしたと同時に、安心もしていた。
『見つけても話すことないし。』
自分でも何がしたいのか分からないこの状況に、いたたまれない気持ちだけが大きくなっていった。
えみは、図書館の外へ出て、近くにあるベンチに腰を掛ける。
夜空を見上げると、今日も綺麗な月がぼんやりと輝いていた。
『井上くんと話したいな。』
そっと心の中でつぶやく。
「何してんの?」
すると、横から声が聞こえた。
「え?」
えみが声が聞こえてきた方を見ると、そこには井上の姿があった。
その瞬間、何とも喩え難い感情が溢れて、えみの目からは涙がこぼれた。
涙は止まることなく、月明かりに照らされて美しく流れ出る。
その様子を見た井上は、戸惑いながらもえみの頭にポンと掌をのせる。
「どうかした?」
井上が優しく尋ねる。
えみは、鼻を啜りながら下を向いて答える。
「井上くんに会えてびっくりしたの。」
意外にもえみの口からは真っ直ぐで素直な気持ちが出た。
井上は、えみの頭の上の手を左右に動かし優しく撫でる。
その時、
「圭くん。」
図書館の方から声が聞こえた。
そこにはゆりこが二人の方を見て立っている。
えみは慌てて立ち上がり、井上の手を振り払う。
「そろそろ帰ろう?」
ゆりこが井上に話し掛ける。
えみは慌てて
「彼女のこと送っててあげて。」
そう言いながら別の方向へと歩き出そうとした。
すると、井上がえみの手をばっと掴む。
「もう暗いから送ってくよ。」
えみは、ゆりこのことが気になって井上の手を振り払う。
「ありがとう。でも大丈夫。」
そしてえみは別の方向へと歩き出した。
井上はえみの姿を目で追う。
「圭くん。あの子誰?どうかしたの?」
ゆりこが井上に尋ねる。
「何でもない。」
そう言うと井上は正門の方へと歩き出した。