繋がる〜月の石の奇跡〜
六章
次の日は夏休み初日ということもあり、えみは昼過ぎまでベットでゴロゴロしていた。

「ちょっと寝すぎたかな。まぁ初日だしいいか。」

携帯電話で時間を確認しながら呟く。

えみはうつ伏せになって枕を包み込むようにギュッと抱きしめる。

そして、合宿のことを考えながら大きく深呼吸する。



すると、えみの電話が鳴った。



えみは画面を見ずに、携帯に手を伸ばしてそのまま出る。

「もしもし?」

自分でも分かるくらいの寝ぼけ声が出た。

「もしもし。」

携帯からは男の人の声が聞こえてきた。

驚いたえみは、ベットから体を起こし携帯電話の画面を確認する。

すると、そこには「大谷 海」という表示がされていた。


「大谷さん?」

いつもの感じと違うトーンの声に少し疑問を抱きながらえみが返事をする。





「井上です。」

と言葉が返ってきた。



その瞬間、えみは更に驚いてベットから転げ落ちる。

「痛っ!」

ベットから落ちたと同時に携帯電話が手から離れて床に落とす。


「大丈夫?」

変わらないトーンで井上が話し掛ける。


えみは床に打ち付けて痛む腰に手をあてながら、電話を拾う。

「ごめん。大丈夫。」

えみは慌てて答えた。


「なんで井上くん?」

状況が読めないえみは、少し早口で聞く。


「今大谷さんと一緒にいるんだけど、大谷さん運転中で。」

えみとは打って変わって、落ち着いた声で井上が答える。

「それより、今からちょっと出れる?」

井上が唐突に切り出す。


「へ?今から?」

井上と電話で話しているこの状況と意外な言葉に呆気にとられる。

「まぁ、色々準備もありそうだから、30分後くらいに向かいに行くから。」


「う、うん。分かった。」

呆気にとられたまま、生返事をする。

「じゃぁ、そうゆうことで。」

そういうと、井上は一方的に電話を切った。



力が抜けたまま、えみはしばらく床に座り込む。

そして井上の言葉で、自分が寝起きだということが電話越しにバレてしまっていたことに赤面する。

「ヤバっ。準備しなくちゃ。」

えみは急いで立ち上がり、ぐしゃぐしゃの髪の毛を手で梳かしながら洗面所へと向かった。
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