繋がる〜月の石の奇跡〜
ドキッ


ドキ・・





「ストーップ!」

後ろから声がしたと同時に、えみの体が後から誰かに抱き寄せられた。

「井上、寝ぼけてんな!」

そこには大谷の姿があった。

「大谷さん。」

井上が寝ぼけた声で言う。

「もう時間だぞ。」

呆れた様子で大谷が言った。

えみは、大谷に抱き寄せられたまま硬直している。

「先にあずさちゃん迎えに行くから、それまでに準備しとけよ。」

「はい。」

井上は目を擦りながら、ドアを閉めた。

「あのー。」

大谷に抱きしめられたままのえみが言葉を発する。

「ん?」

大谷がえみの顔を覗き込む。


「そろそろ離して下さい!」

顔を赤くしながらえみが言った。

「ああ、ごめん、ごめん。」

大谷は、いつものようにおちゃらけた態度ではなく、顔は笑っていなかった。

そして、えみの体を支えていた手を緩め、車へと歩き始める。

「じゃぁ、あずさちゃん家に行こう。」

「はい。」


『もし大谷さんが来なかったら、私と井上くん、、』

えみは頭の中で井上の事を考えた。
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