繋がる〜月の石の奇跡〜
合宿所に着くと、他のメンバーは既に到着していた。

敷地内には、えみたちの通う大学サークル以外にも他の大学やどこかの会社の人たちで割と賑わっている。

「大谷!井上!」

遠くの方から二人を呼ぶ声がする。

「遅いぞ!」


「わりぃ!」

大谷が両手を前に合わせて謝る。

「井上、荷物運ぶの手伝いに行ってもらえるか?先に受付済ませてくるから。」

「うっす。」

井上は他のメンバーがいる方へと向かう。

「私たちも手伝うよ。」

えみが井上に向かって言う。

井上は、えみたちの方に振り返り、

「力仕事は男に任せろ!」

わざとらしく、右手の力こぶを見せて言った。

「きゃー!あの腕みた!?」

あずさが興奮気味に言う。

「井上くんて見た目細身だけど、いい筋肉してるんだね!しかも意外にお茶目!もっとクールな人だと思ってたよね!」

あずさの興奮は止まらない。

「えみちゃんとあずさちゃんも受付に一緒に来てもらえる?その後、合宿所内を簡単に案内したいからさ。」

「分かりました。」

少し元気のない声でえみが言う。

『お茶目な井上くんを独り占めしたい・・。』

えみには、そんな感情が生まれていた。

「えみちゃん、今日の夜はみんなで花火しようね。」

えみの表情が変わったことをいち早く察知した大谷が話題を変える。

「え?あ、はい。」

えみは笑顔を作って返事をする。

三人は受付を済ませ、大谷がえみとあずさの部屋とキッチンを案内する。

「他に何か分からないことがあったら聞いてね。」

「ありがとうございます!」

あずさが元気よく返事する。

「じゃあ、僕はメンバーの方を手伝いに行ってくるから、御飯の準備とかしてもらってもいいかな?」

「はい!任せて下さい!」
調子よくあずさが答える。


「じゃぁ、よろしく。」

大谷は、小走りでその場から立ち去る。

「えみー!何か楽しくなりそうだね!」

「うん。そうだね。」

えみは心ここに在らずな返事をした。
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