繋がる〜月の石の奇跡〜
えみとあずさは自分たちの部屋へと戻る。

あずさは、ベッドに横になり持ってきた雑誌を読み始める。

「えみの今月の運勢はねー、波乱の予感だって!『物事が上手く進まず気分が落ち込むかも』だってさ!」

「へー。」

あずさとは違って、えみは占いにはあまり興味がなかった。

「ね、あず。」

えみがあずさに話し掛けると、さっきまで元気だったあずさが寝息を立てて眠りについている。

「朝早かったからね。」

えみはそう呟くと、静かに部屋から出て行った。

『体育館にでも行ってみようかな。』

えみは、井上に会えることを少し期待しながら体育館の方へと向かった。

体育館のドアを少しだけ開けて中を覗くと、そこには誰の姿もなかった。

『せっかく来たし、久しぶりにシューティングでもしてみようかな。』

えみは裸足で体育館の中に入って行く。



トントントン

ドリブルをついてレイアップシュートをしたり、フリースローラインからシュートを打つ。

『まだまだ鈍ってない。』

えみの打ったシュートは高確率で決まる。

えみが夢中でシューティングしていると、体育館のドアが開く音がした。


スリーポイントラインからシュートを打とうとしていたえみの体が一瞬止まる。

すると井上が体育館に入って来た。

「井上くん!」

突然のことにえみは驚く。

「よお。」

「どうしたの?」

「さっき体育館入って行くの見かけたから。」

「そう。」

『どうして井上くんは、会いたいと思ったときに現れてくれるんだろう。』


『前にもこんなことあった。』

えみには言葉にはできない感情が生まれていた。

「シューティング?」

「う、うん。でもバッシュないから軽くやってただけ。井上くんは何してたの?」

「今から洗濯しに行くところ。」

「洗濯?手伝おうか?」

「マジで?」

「うん。暇だし。」

「サンキュー。」

井上がニコッと笑い掛ける。

『もっと話したい。』

えみはそう思っていた。

二人は、合宿所内にあるランドリーセンターに向かう。

「今日天気いいな。」

「そうだね。でも暑い。」

「洗濯機回したら、川の方行ってみる?」

「え?川?」

「そう。近くにあるじゃん。今日バーベキューと花火するところ。」

「う、うん!行ってみたい。」

「オッケー!」

井上はいつになく優しい雰囲気である。
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