繋がる〜月の石の奇跡〜
コンコン

えみは、誰かが部屋のドアをノックする音で目を覚ます。

「えみちゃんいる?」

部屋の外から大谷の声が聞こえてきた。

えみが時計を見ると5時を回っていた。

えみは慌ててベッドから飛び起き、ドアを開ける。

「すみません!」

えみの慌てた様子を見て、大谷にが優しく微笑む。

「寝てた?」

大谷は、えみの乱れた髪を整えながら言った。

「すみません。ちょっと休むつもりが2時間も寝ちゃうなんて。」

「大丈夫だよ。今からバーベキューの食材運ぼうと思ってるんだけど、どれ運べばいいか教えてくれない?」

「あ、私も手伝います。」

二人は食堂のキッチンに向かい、冷蔵庫から肉や野菜を取り出す。

「色々準備してくれて本当にありがとうね。」

「いえ、お役に立ててよかったです。」

二人は荷台に食材を乗せて、バーベキューをする川辺へと向かう。

「あ、あずさちゃんは平気?」

思い出したように大谷が尋ねる。

「あず、関谷さんって人に呼ばれて出て行ったまま帰って来てないので、先にバーベキューのところに行ってるのかもしれません。」

「あぁ。関谷か。」

何か知っているように大谷が言う。

「関谷さんってどんな人ですか?」

「関谷はね、真面目でいい奴だよ。」

「そうですか。」

えみは安心した様子で返事した。

「大谷?」

川辺までの道のりを半分程きたところで、誰かが大谷の名前を呼ぶ。

「大谷だよな?久しぶりじゃん!」

大谷の方に男性が寄ってきた。

「おお!木田!久しぶり!」

二人はお互いを懐かしむように肩を抱き合う。

「えみちゃん、こいつ俺の高校時代の友達の木田。」

「木田です。」

「はじめまして。真田です。」

えみは小さくお辞儀をして挨拶する。

木田は大谷の似たような雰囲気の誠実そうな男性である。

「大谷、いつの間にこんな可愛い彼女できたんだよー。」

木田は茶化すように大谷に言う。

「彼女だったら嬉しいんだけどさ。違うんだよー。俺は好きなんだけどねー。」

大谷は、えみの方をチラッと見て答える。

えみは、恥ずかしくなって俯いた。

大谷と木田は2、3分世間話をしてから別れる。

えみは未だに気まづい気持ちで下を見続けていた。

「えみちゃん。」

大谷がえみの名前を呼ぶ。

「そーゆうことだから。」

大谷は、真面目な顔つきで言う。

「え?」

えみは大谷の方を見上げて不思議そうに聞き返す。

「好きだよ。えみちゃんのこと。」

二人は足を止めて見つめ合う。

えみは返答に困って黙り込んでしまう。

「合宿の最終日の祭り、一緒に行かない?」
大谷は、前を向いて歩き始めながら言った。

突然の告白と誘いに、えみは言葉を失う。

「まぁ、返事は今すぐじゃなくてもいいよ。」

大谷は、困ってるえみの様子を察して優しく言った。

えみと大谷は、近くも遠くもない間隔を保ちながら川辺へと歩き始めた。
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