繋がる〜月の石の奇跡〜
えみと大谷が川辺に着くと、大半のメンバーが既に集まって賑わっている。

えみはその中から、自然と井上の姿を探す。

すると他のサークルメンバーと楽しそうに川ではしゃいで遊んでいる井上の姿が飛び込んだ。

えみは井上を目で追いながらも、大谷に言われた言葉を思い返していた。

「えみちゃん、あとは僕がやるから大丈夫だよ。」

えみに気遣うように大谷が言う。

「いいえ。私も一緒にやります。」

えみは井上に向けていた視線をそらし、大谷の方を見る。

そして、二人は運んできた食材を焼き始めた。

「えみ!」

肉や野菜が丁度良い具合に焼けてきたころ、あずさがえみに気が付いて声を掛ける。

「ちょっと話があるの。」

あずはえみの近くに寄ってきて、耳元で小声で話した。

「え?」

「大谷さん、すみません。ちょっとえみ借りますね。」

あずさは、大谷にニコっと笑顔を見せ、強引にえみの腕を掴んで少し離れたベンチへと連れて行く。

えみにはあずさが話そうとしている内容がおおよそ予想できた。

二人はベンチに座り、あずさが早速話し始める。

「えみ、あのね。さっき部屋に来た関谷さんって人に最終日のお祭り一緒に行かないかって誘われちゃったの!」

あずさは少し照れながらも嬉しそうに話す。

「よかったじゃん!関谷さん良い人みたいだし。」

「うん。話してみたら優しいし、面白くて良い感じなんだけど、大谷さんや井上くんみたいなイケメンではないじゃない?」

あずさは、えみの様子を伺いながら控えめに話す。

「そう?私は結構カッコイイと思うけど。」

えみはあずさの背中を押すように言葉を掛ける。

「カッコイイかな!?」

あずさは、えみの言葉を待っていたようにすぐさま返事する。

「うん。すごく良いと思うよ。」

えみはあずさの気が済むように言葉を続ける。

「そうかな。そうかもね!」

あずさは満足したような顔で、薄暗くなってきた空を見上げた。
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