繋がる〜月の石の奇跡〜
その頃、井上は仲間とバーベキューを楽しみながらもキョロキョロと落ちつかない様子でいた。

そんな中、井上はあずさの姿を見つける。

「新田さん。」

井上はあずさに話し掛ける。

あずさは少し緊張した様子で井上の方を見る。

「あの、真田さんってどこにいるか知ってる?」

「あ、えみ?たぶん、あっちのベンチにいると思うよ。」

あずさはベンチのある方を指差しながら答えた。

「そっか。ありがとう。」

井上は、お礼を言いながらも既にベンチのある方へと真っ直ぐ歩き始める。

「井上。」

そのとき、誰かが井上を呼び止める。

井上が後ろを振り返ると、大谷が立っていた。

「なんすか?」

大谷は、井上の方にゆっくりと近づいて行く。

「俺、えみちゃんに、好きって伝えたから。」

大谷は、いつになく真剣な表情をしている。

二人の間を流れる空気が一瞬止まり、辺りは一気に静まり返る。




「俺も伝えます。」

井上は、静寂を壊すようにそう言い放って、急いでベンチの方へと向かって行った。



「ふぅー。」

大谷から深く大きなため息が出る。

そのため息は、どこか意味深で何か悟っていた。
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