繋がる〜月の石の奇跡〜
えみとあずさは部屋の掃除を終え、浴衣の着付けを始める。

えみは、あずさから借りた白地に紫と水色の水玉が描かれた浴衣を、あずさは白地に黄色と緑の朝顔の柄が入った浴衣を着た。

二人ともいつもよりも念入りメイクをする。


あずさは、えみよりも早く支度を終えて、鏡に映る自分をチェックしたり写真を撮ったりしている。

メイクをしている間も、えみの心のドキドキは止まらない。

『あと30分か。。なんだか緊張してきちゃったな。。』

えみは時計を見ながら自分の胸に右手を当てる。

『緊張し過ぎて苦しい。。』


「ちょっと水飲んでくるね。」

えみはスッと立ち上り、部屋から出てキッチンへと向かった。


キッチンへ入ると、そこには大谷の姿があった。

「えみちゃん?」

大谷は、いつもとは少し違うえみを見て驚いた表情をしている。

「大谷さん。」

えみは、気まづい表情で言った。

大谷は、浴衣姿のえみに見惚れているのか、えみの方を見たまま止まっている。

「大谷さん・・・?」

えみの一言に大谷は我に返る。

「さっき洗い物したとき、リストバンド忘れちゃってさ。取りに来たんだ。」

「そうですか。私は水を飲みに。。」

えみは、恥ずかしそうにしながら冷蔵庫に向かう。

「ああ、水ね。」

えみよりも冷蔵庫の近くにいた大谷も冷蔵庫の方に行く。

大谷は冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、えみの方に差し出す。


「あ、ありがとうございます。」

えみは大谷の顔を見れないまま、俯きながらペットボトルを掴む。


するとその瞬間、


ペットボトルを掴んだ手がぐいっと大谷の方へ引き寄せられ、大谷はえみをぎゅっと抱きしめた。

えみは驚いて、そのまま動けずにいる。



すると、抱きしめられていた大谷の体がサッと離れると、大谷は何も言わずに、キッチンから出て行った。

えみは、大谷が出て行ったあとも一人キッチンに立ちすくんでいる。

そして抱きしめらたときの大谷の胸のドキドキが耳から離れずにいた。
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