繋がる〜月の石の奇跡〜
えみは合宿所へ急いで戻ってみる。

『井上くん、もう合宿所に戻ってるかな。』

合宿所の入り口に入ると、あずさと関谷が仲良く手を繋いで歩いていた。

「あず!」

えみは息を切らしながらも、精一杯の声であずさを呼んだ。

「えみ!どうしたの?そんなに急いで。」

あずさはえみの方に駆け寄って話しを掛ける。

「あの、井上くん見なかった?」

「井上くんって、えみと一緒にいたんじゃなかったの?」

あずさは少し驚いた表情をする。

「一緒にいたんだけど、ちょっと逸れちゃって。」

えみはあずさに色々と悟られないようにさらっと答える。

「電話してみれば?」

関谷が冷静に言う。

「電話、、そうだね。」

えみはハッと気付いて、急いでアドレス帳から井上の電話番号を探して電話を掛ける。

発信音が10回以上鳴っても、井上が電話に出ることはなく、留守番電話にもならなかった。

「井上くん、電話に出ない。」

えみが困った顔をする。


「もしかしたら部屋で寝てるのかもしれないな。ちょっと確認してくるから待ってて?」

関谷はえみの落ち込んだ様子を見て、慰めるように言った。

「ありがとう。関谷くん。」

えみは小さくお礼を言った。


「えみ、本当に逸れちゃっただけなの?井上くんと何かあったんじゃない?」

あずさが心配そうにえみに尋ねる。

「えっと。。」

そう言って、えみは下を向いたまま何も答えなかった。

あずさは、深く追求することなく、えみの横に寄り添った。
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