繋がる〜月の石の奇跡〜
海岸の入り口の階段まで来て、えみは足を止める。

えみの視界には、海を見ならが砂浜に腰を掛けている井上の姿が飛び込んで来た。

『井上くん。』

えみは、ギュッと拳に力を入れて、井上に近づいて行く。

「井上くん。」

震える声で、えみは一生懸命声を出す。

井上は、海を見つめたままじっとしている。

「あの、お祭りのときはごめんね。私、思いがけないことで動揺しちゃって、、」

えみが話し始めても、井上は遠くを見つめたままでいる。

「でもね、あの後すぐに、私の頭の中は井上くんのことでいっぱいになったの。」


えみは握っていた拳に更に力を入れて、思い切って言葉を発した。


「私が、あの日、、、お祭りに一緒に行ったあの日に、井上くんに伝えたかったことは、、私は、井上くんのことが、」


「俺は」

えみの話しをかき消すように、井上が言葉を被せた。

「俺は、もう真田さんに対して特別な感情はないから。」


えみの中で時が一瞬止まった。


『え。』



井上は、そのまま立ち上がって海岸から出て行った。


真夏の朝に吹く潮風が、えみを慰めるようにただただ吹き続けた。
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