繋がる〜月の石の奇跡〜
「井上?」

井上が家に戻る途中、ちょうどコンビニから出てきた大谷に呼び止められた。

「もう帰って来てたのか?意外と早かったな。」

井上は、大谷の顔を直視できずに、何となく目をそらす。

「あ、はい。」

大谷は、いつもと様子の違う井上に違和感を感じた。

「そんなに気使うなよ。上手くいったんだろ?えみちゃんと。」

大谷は、自ら話題を振って井上に気を使わせないように笑顔で話す。

「‥‥‥。」

井上は下を向いたまま何も言えずにいる。


「井上?えみちゃんと何あったのか?」

大谷はさっきよりも真剣な顔で聞く。



「‥‥大谷さん、俺‥真田さんのことはもう何とも思ってないんで‥。」

井上は淡々と話す様子を見て、大谷は目の色を変えた。

「どう言うことだよ?お前ら同じ気持ちになったんじゃなかったのか?祭りに行って、お互いの気持ち確かめ合ったんじゃないのかよ?」

大谷は、下を向いたままの井上の肩に手をかけて、強い口調で言う。

「‥‥。」

井上は、大谷の目を一瞬見て、またそらした。

「おい!どういうことだよ?」

井上の肩に掛かっていた大谷の手にぐっと力が入る。




「もういいよ。」

黙り続ける井上にしびれを切らした大谷は、井上の肩を押すようにして離し、えみの家へと走り出した。
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