繋がる〜月の石の奇跡〜
大谷は、えみの家に向かいながら、あのときの井上の冷め切った表情を思い出す。

『あいつ、えみちゃんを悲しませたなら許さねぇ。』

大谷は、抑えられない気持ちを動力に猛スピードで走る。


そしてえみの家に着いて、一度息を整えてからチャイムを鳴らした。

二、三度チャイムを鳴らしても、えみは出てこない。


大谷は、急いで電話を取り出して通話履歴からえみの名前を探して電話を掛ける。


四回目の着信音の後、留守番電話に繋がり、大谷の口からは溢れるようにして言葉が出てきた。


「えみちゃん。僕がすぐ行くから、大丈夫だからね。」

形振り構わず留守番に言葉を残し、今度はあずさに電話を掛ける。


「あ、あずさちゃん？急にごめんね。えみちゃんなんだけど、あずさちゃん家行ってない？」


大谷のいつもと違う慌てた様子にあずさも慌てる。


「え、、さっき井上くん探しに海岸に行ったと思いますけど。。何かあったんですか？」


大谷の電話からは、あずさの心配そうな声が聞こえてくる。

「ううん。大丈夫。教えてくれてありがとう。」

大谷は、電話を切って海岸へと向かって走り出した。

そのとき、さっきまで真っ青に晴れていた空は、一気に暗くなり、雨がポツポツと降り始めた。
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