繋がる〜月の石の奇跡〜
雨は次第に強くなり、大谷の視界を遮る。

大谷は、降りしきる雨の中、えみのことだけを思い走り続けた。

そして海岸の入り口の階段を一気に駆け上がり、砂浜を見渡すと、まるでそこだけ時が止まっているかのようなえみの姿があった。

えみは、雨に打たれてずぶ濡れになったまま砂浜に座り込んでいた。



「えみちゃん！」


大谷は、名前を呼んですぐさまえみの側へと駆け寄った。

「‥‥‥。」


えみは下を向いていて表情が見えない。


「えみちゃん、もう大丈夫。」


大谷は、えみの体を抱き寄せて優しく呟いた。


「大谷さ‥ん‥‥」


次の瞬間、えみの体の力が抜け、大谷の体に突然えみの体重がかかる。



「熱！？」

大谷は、えみの額が、自分の頬に触れて、えみの体温が異常に熱いことに気がつく。


えみは、目を閉じて少し苦しそうに息をしている。


「えみちゃん‥。」

大谷は、えみの体をぎゅっと抱きしめたあと、自分の体の向きを変えて、えみを背負って歩き始めた。


そして、電話を取り出して電話を掛ける。



「もしもし？あずさちゃん？何度もごめんね。えみちゃん見つけたよ。それで、ちょっと頼みたいことがあるんだけど‥‥。」


大谷は、あずさに用件伝えて電話を切る。



辺りは一気に明るくなり、太陽が顔を出し始めた。

そして、えみと大谷を見守るように、空には一筋の虹が現れた。
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