繋がる〜月の石の奇跡〜
えみは、ぼんやりと目を開ける。


すると、そこにはあずさの姿があった。



「えみ!」


目を覚ましたえみに気が付いて、あずさが声を掛ける。


「あず‥?」


えみは、あずさの顔を見てから、辺りを見渡す。


「私、どうしたんだっけ‥ここは?」


えみは、自分のおでこに手を当てながら言う。


「大谷さんの部屋だよ。えみ覚えてない?海岸でずぶ濡れになってたところを、大谷さんがここまで負ぶって連れて来てくれたんだよ?」

心配そうにえみを見ながら、あずさが説明した。


「大谷さん‥。」


そう呟くと、えみの頭の中にさっきの出来事が次から次へと蘇ってきた。

『ああ、そうか。私、井上くんに振られたんだ。それで雨が降ってきて、大谷さんが来てくれて‥。』

えみは、天井のライトを見つめながら、静かに現実と向き合っていた。
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