繋がる〜月の石の奇跡〜
えみの話を全部聞き終わったあずさは、明らかに不機嫌になっていた。


「井上くんありえない!元カレの存在くらいで、気持ちがなくなるなんておかしいよ。」


あずさは、ベッドの端に自分のこぶしを叩きつけながら井上に対する不満をこぼした。

「‥‥。」


えみは海岸での井上の冷たい表情を思い出していた。


「井上くんが、そんな柔な男だとは思わなかったよね。」

あずさの井上に対する怒りは収まらない。


「いいの、あず。もう大丈夫だから。」

えみは、それ以上深く語ることなく、ゆっくり目を閉じて深呼吸をした。


“もう大丈夫”‥その言葉とは裏腹にえみは、瞳にじわじわと湧き出るものを感じていた。
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