会長代行、貴方の心を全部わたしにください
姉離れをした俺とは逆に、詩乃は事あるごと俺を心配し、俺のマンションに押し掛けてきた。

自分の仕事の話、俺の仕事や体調を窺いーーそんな日々を過ごす内、俺のマンションが交通に便利だからと押し掛け、強引に同居し始めた。

出版社の多忙さとトラブル続きですっかり疲弊した俺は、詩乃と暮らすことでずいぶん癒されたし、助けられた。

詩乃の気持ちに気づかずに数年、詩乃と過ごし会長代行に就任し、初めて詩乃の気持ちに気づいた。

「詩乃は俺にとって姉なんだかな。あの人にとって俺はただ弟ではないようだ」

そう話している俺に、芹沢は「やはりそうですよね。わたしも感じています」と言いたげな様子で、苦笑いしている。

総代との話は人事に関することだったが実際、重役たちの間で派閥があり、今は時期ではないとのことだった。

さらに総代は「春先に行われる株主総会に向けて、派閥を纏め、地盤固めをする必要がある。心しておけ」と持ちかけた。
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