会長代行、貴方の心を全部わたしにください
当の会長代行は彼らの心配をよそに、何でもござれ、サラリとこなしてしまうのだけれど。

会長代行は席に座ってひと息つく間もないほどのスケジュールに追われながらも、しっかりと原稿を仕上げた。

かつては鬼と呼ばれた会長代行の元上司、円山出版編集部の黒田芽以沙を始め、数社の出版社編集が訪れたが彼らは皆、有無を言わず頷いた。

「いつもながら、さすがの仕上がりですね。天晴れというか、文句のつけようがない」と。

でも、会長代行は黒田さんの言葉に首を傾げた。

「黒田さん、そう言いながら今1つ納得していませんよね」

元同僚で、元上司だった人だからこそ厳しいコメントを求めたのかもしれない。

「そうね……沢山江梨子と競っている企画だからかしら。寄せないように意識しているわよね、キャラの色を濃くするために苦労しているでしょう?」

「解ってもらえます? さすが黒田さん」

「解るわよ。何年、貴方を見てきてると」
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