会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「それは……会長代行が」

「おかしいでしょ!? うちの会社には会長車もあるし、専属の運転手もいるのに、それも手配できないの?」

「ですから、会長代行が……」

「由樹はね、生まれつき心臓が弱いの。無理をさせちゃいけないのよ。何度も言わせないで」

詩乃様の眼にはうっすらと涙が滲んでいる。

「でも……私が幾ら申し上げても、会長代行ご自身が動ける時は動きたいと、仰いますので」

「解らない人ね。だから、由樹のスケジュール管理は秘書なんかに任せられないのよ。今日は大事に至らなかったけれど、倒れてからでは遅いのよ」

私を睨みつけた詩乃様の真剣な顔が、私の顔の間近に迫り、詩乃様の手が私の肩を強く揺さぶる。

「お願い。由樹に無理をさせないで。由樹は……」

「あの……お姉さまですよね? 詩乃様は会長代行のお姉さまですよね?」
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