会長代行、貴方の心を全部わたしにください
会長代行は仕事に関して厳しい人だ。

結城コンツェルンの行く末を真剣に考えて、計算ずくで行動しているのは、半年間ずっと側で仕事をしていて感じる。

私の意見になど、耳は貸さないだろうと思う。

でも、詩乃様の想いが切なくて、私はそう答えるしかなかった。

詩乃様は、深く深く頷いて、やっと落ち着きを取り戻し、車に乗り込んだ。

窓越し、私に1礼し、車を走らせた。

詩乃様と入れ替わり、会長代行が玄関前に現れた。

「誰かいたのか?」

「いいえ……」

「詩乃の車が通った気がしたがーー気のせいだったのか」

会長代行の言葉に息を呑む。

詩乃様がブラコンなんて、とても言えない。

「あと一息、1時間で終わらせる」

会長代行は穏やかに言うと、ロビーを進んで行く。

「はい」

私は平静を装いドキドキしながら、会長代行の後を追った。
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