会長代行、貴方の心を全部わたしにください
私の背後で、由樹の声がした。


「大きな声だな。処置室まで聞こえた」


私と芹沢香生子が振り向くと、由樹は穏やかに笑った。


「心配かけてゴメン」


唖然としている私をギュッと抱きしめる。


「俺がスケジュール、いっぱいにしたんだ。芹沢を責めないでやって」


由樹は私を抱きしめたまま、優しい声で言う。


「どうして……体はもういいの?」


「ん、大丈夫。今週は幾つか難しい商談や契約がある。だから、関係する会社や役所など、情報整理や根回しが必要で、スケジュールを詰めたんだ」


「でも……体が」


「詩乃、大丈夫だから。今日は気分が悪くなった時に会議中で、薬を飲むのが少し遅れただけ。主治医とも相談して、薬の変更もしたし」


由樹は優しい声で私を宥める。
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