会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「息苦しさで不安と焦りもありますので、操作に慣れていても手順が幾つかあると集中できなくなり、普段は簡単にできる操作がままならなくなります」


酸素ボンベを扱うにあたり、安全性を考えると、使う側の意見ばかりを尊重できない。


公共の場での取り扱いは特に慎重だ。


酸素ボンベは電車、船舶、飛行機など公共の交通では持ち込み制限もされている。


「操作が簡単になれば、その分、安全性が問われるのも事実です。が実際、使用しているのは──」


会長代行が話すのを横で聞きながら、思い当たることが、幾つかあった。


発作が起きると、会長代行はペンを握っていることさえままならないし、体を起こしていることさえままならない。


薬を服用して数分、手を胸に押し当てうずくまり、声を掛けても、まともに答えることができない。
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