会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「次の小説、打診されているんですってね」


携帯酸素ボンベの管の先を液体酸素装置につなげる操作をしながら、会長代行は溜め息をつく。


「ああ、ネタには困っていないけれど……執筆時間がなかなか捻出できない」


会長代行と詩乃様、平穏に話しているな~ッと思っていると、詩乃様がいきなり立ち上がった。


「貴方、ちゃんと寝ているの? 睡眠時間、削って……」


「詩乃、そんな余裕はないよ。体がもたない」


「お父様よりも、貴方の方が……」


「詩乃。用心はしているし、元とも主治医とも連絡は取り合っている」


「でも……」


「俺のことより、自分の仕事はいいのか? 1から立て直しなら尚更、やるべきことが幾つもあるだろう」


詩乃様は黙って会長代行を見上げ、じっと見つめている。
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