会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「詩乃。俺1人の都合で相手のスケジュールを狂わせる訳にはいかない。時を逃すのは得策ではない。『Time is money』と言うだろ」


「すっかり経営者の顔ね」


「会長代行だから。お父様の名に傷をつける訳にはいかない。それに……動ける時に動いておきたい。言ってる意味、解るだろ」


見上げた由樹の優しい笑顔は変わらないのに、瞳は笑っていなかった。


「今はまだ大丈夫。いづれは詩乃に頼らなきゃならなくなるだろうけど」


由樹の顔色がまだ青白い。


本調子でないのは明らかだ。


「詩乃、これから嶋津ゼネレーションの社長と会うんだ。この顔色では会えない」


由樹はそう言ってはにかみ「頼む」と、私のバックに目を落とし、私の手を引いて待合室のベンチに座った。
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