会長代行、貴方の心を全部わたしにください
花を生けた花瓶を抱え、会長室に戻ると会長代行は既に席についていた。

机の上に積み重ねた幾つものファイルと決裁済みの書類、何時に出社したんだろうと思う。

窓辺に花瓶を置いて、スケジュール確認の手帳を取り出し、会長代行の席の前に立つと会長代行も自分の手帳を確認していた。

「芹沢。この重役会議の後、11時に大和物産社長と会食が入った。14時の長谷工にはじゅうぶん間に合うだろう」

「早朝出勤なさって見ておられた案件は、大和物産の」

「ああ。企画部から上がってきた案に目を通していた。会食には企画部日比野部長が同席する」

「あの会食の後に、少し休まれなくてよろしいですか? 14時後の予定が詰まっているようですが」

「そうだな。会食次第だな」

「あの……スケジュールを詰めすぎると……」

「詩乃を気にしているのか。だったら要らぬ世話だ」

「でも……」
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