会長代行、貴方の心を全部わたしにください
給湯室から出て、ファイル棚の影から兄と教務課課長の様子を窺う。

「君たちは、道楽でパソコン受講をしている連中にも検定を受けさせるつもりかい?」

「はい。当人に受験の意志があれば、受験してよいと思っています」

「そもそも、あのご老体たちは原稿さえ打ち込めれば」

「それは当人の意志の問題で、こちらが判断することではないのではありませんか?」

「……彼らの受験担当は誰だ」

兄は憮然として腕組みし眉を吊り上げ、声を荒らげた。

「えーと、会長代行に依頼しておりますが」

「会長代行……あのバカがしゃしゃり出てきやがって」

「いえ、こちらから依頼したのです。会長代行の親しいお知り合いですので」

「無駄な時間と労力だな。受験したとしても、おそらく箸にも棒にも引っ掛からないご老体。合格率を下げるだけだ。受験を辞退させてしかるべきだ」
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