会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「ですが……受講者として受験資格は平等であるべきでは」

「原稿を打つだけのために、受講しているんだろう? 資格など必要ないだろう」

「資格の必要云々を決めるのは、こちらではありません。ご本人です」

「ならば、その本人たちをここへ」

「直談判……そこまでしますか」

出ていくべきか否かを躊躇していると、聞き覚えのある声が2つ聞こえてきた。

タイミングの悪いところに通りかかったものだと、急いで廊下へ出た。

「先生方、お静かに」

ご老体たちを黙らせ、足止めした。

「結城くん、何ごとかね」

西村先生が俺の耳元に、口を近づけ内緒声で訊ねてきた。

「今、兄に見つかっては不味いんです」

ご老体2人は、さっぱり意味がわからないと言いたげに、大袈裟に首を傾げた。

「つべこべ言わずに、サッサと連れてきたまえ」

「失礼ですが、私の直属の上司は貴方ではありませんので」
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