会長代行、貴方の心を全部わたしにください
教務課の会話にも耳を澄ませつつ、ご老体たちに中の会話が聞こえなければいいがと思った。

「検定の案内をもらったんだがね。儂たちは遠慮したはずだが」

「先生方のご意志をまだ教務課に伝えていませんので。それに今、兄が教務課に乗り込んで来ていまして」

俺たち3人がそう話す間も中では兄とスタッフの噛み合わない会話が続いている。

教室から出てきた受講者たちも何事かと足を止め、廊下はぎゅうぎゅう詰め状態だ。

「要するに、年寄りは今さら受験しても受からんだろうから受けるなと言われているのだな」

「すみません。兄が失礼を申しまして」

「な~に構わんさ。君が編集を辞めて、必要に迫られて受講し始めたんだ」

「原稿が自分で打てればいいのだから。しかし、こうして、あからさまに年寄り扱いされておるのは、ムズムズするのう、梅川くん」

「西村くんも存外、負けず嫌いのようだな。いやはや……」
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