会長代行、貴方の心を全部わたしにください
俺は彼らが寛大で良かったと、胸を撫で下ろした。

「これから、合格した受講生たちとカラオケに行くんだ。またな」

合格したことが余程嬉しかったのだろう。

若い受講者たちとも、すっかり打ち解けている彼らの柔軟さ。

編集担当としてではなく、教務課スタッフとしてでもなく、友人として頼もしかった。

「会長代行、お2人とも良かったですね」

「ああ、熱心に学ばれていた。努力が報われたんだ。学ぶこと、努力することに年齢は関係ない」

「そうですね。わたしも見習わなきゃ」

「芹沢、君はよくやってくれている」

「わたしは決められたことをこなすのが精一杯で……」

「誰しも自分のぺースがある。決められたことをやってくれている、それでじゅうぶんだ」

芹沢が「はい」と返事をし、はにかむ顔を見ているとそれ以上は言えなかった。
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