会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「君には多くは望まない。必要最小限できればいい」

と、胸の内で呟いた。

誰よりも早く出社し、秘書室と会長室の机を拭き上げ、花瓶に花を生ける。

その気配りだけでも、彼女の好感度は他の秘書たちよりも高い。

事実、俺は書類選考で彼女を秘書として抜擢していない。

彼女には着任した時に話したが、彼女はどこまで理解しているのだろうか。

秘書室には自分はさも仕事ができるという態度の言動をしている女性社員が数人いる。

だが、俺に言わせれば「できる」と思っているのは本人だけで、思い上がりもいいところだ。

「わたしも頑張らなきゃ」と言える芹沢、彼女の方が謙虚で向上心がある分、伸び代がある。

俺自身が秘書課の女性リストから選んだということで贔屓目な部分はあるが、それを差し引いても、俺の秘書は彼女の外は考えられない。

彼女に面と向かって言うのは気恥ずかしいが。
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