幸田、内緒だからな!
あーびっくりした。
と、廊下に出たところで直紀が見知らぬ和服美人と連れ添って歩いて来るのに出くわした。
「おはようございます。社長、お早いんですね」
てっきりまだ二日酔いでベッドの中かと思っていた。
だから、出掛ける予定を1時間遅らせて欲しいと言ったのだと。
社長は、夕べ遅くまで飲んでいたとは思えぬ爽やかさで、女性に笑顔を向けていた。
「彼女が僕の秘書の早瀬です」
「早瀬さん、可愛いお嬢さんだ事」
誰?
にじみ出るその笑顔は、偽りのないものだった。
「早瀬さん紹介するよ。こちらは中川呉服店の娘さんで、中川佐登子(なかがわさとこ)さんだ」
「初めまして。藤堂の秘書をしております、早瀬でございます」
頭を下げる。
「あらまぁ、顔を上げて下さい。堅苦しい挨拶はけっこうよ。あなたお年は?」
「28歳でございます」
「あら、それじゃわたしより7つも年下なのね」
「7つと申されますと、藤堂と同じ年齢という事ですか? いや、見えません。わたくしと同じくらいかと」
「まぁ、ありがとう。そうね、確かに年よりかは若く見られるかしらね」
彼女は、終始変わらぬ笑顔を振りまいていた。
それは決して嫌な感じではない。
温かい笑顔だった。
「それじゃ佐登子さん、わたしの部屋へ行きましょうか。早瀬さん、コーヒーを頼む」
「承知致しました」
コーヒーを持って部屋を訪ねると、ふたりは何やらパンフレットのようなものをテーブルに広げて見ているところだった。
しかも、ソファーに身を寄せ合い、仲睦まじく。
もしかして……
この人が直紀の縁談の相手?
血の気が引きそうだった。
コーヒーを置く手が僅かに震える。
こぼさないようにと、神経を集中させた。
「ここのウエディングも素晴らしいんですのよ」
えっ……
2人が見ているのは、結婚式場のパンフレットだった。
胸がドキドキする。
苦しい。
息が苦しい。
と、廊下に出たところで直紀が見知らぬ和服美人と連れ添って歩いて来るのに出くわした。
「おはようございます。社長、お早いんですね」
てっきりまだ二日酔いでベッドの中かと思っていた。
だから、出掛ける予定を1時間遅らせて欲しいと言ったのだと。
社長は、夕べ遅くまで飲んでいたとは思えぬ爽やかさで、女性に笑顔を向けていた。
「彼女が僕の秘書の早瀬です」
「早瀬さん、可愛いお嬢さんだ事」
誰?
にじみ出るその笑顔は、偽りのないものだった。
「早瀬さん紹介するよ。こちらは中川呉服店の娘さんで、中川佐登子(なかがわさとこ)さんだ」
「初めまして。藤堂の秘書をしております、早瀬でございます」
頭を下げる。
「あらまぁ、顔を上げて下さい。堅苦しい挨拶はけっこうよ。あなたお年は?」
「28歳でございます」
「あら、それじゃわたしより7つも年下なのね」
「7つと申されますと、藤堂と同じ年齢という事ですか? いや、見えません。わたくしと同じくらいかと」
「まぁ、ありがとう。そうね、確かに年よりかは若く見られるかしらね」
彼女は、終始変わらぬ笑顔を振りまいていた。
それは決して嫌な感じではない。
温かい笑顔だった。
「それじゃ佐登子さん、わたしの部屋へ行きましょうか。早瀬さん、コーヒーを頼む」
「承知致しました」
コーヒーを持って部屋を訪ねると、ふたりは何やらパンフレットのようなものをテーブルに広げて見ているところだった。
しかも、ソファーに身を寄せ合い、仲睦まじく。
もしかして……
この人が直紀の縁談の相手?
血の気が引きそうだった。
コーヒーを置く手が僅かに震える。
こぼさないようにと、神経を集中させた。
「ここのウエディングも素晴らしいんですのよ」
えっ……
2人が見ているのは、結婚式場のパンフレットだった。
胸がドキドキする。
苦しい。
息が苦しい。