幸田、内緒だからな!
サプライズ・ウエディング!
「知花、大丈夫か!」

 大きな声でリビングに入って来た直紀は、はあはあと息を切らしていた。

「どこだ? どこを怪我したんだ?」
「えっ? ち、ちょっと突き指を……」

 お母さんが直紀を驚かせる為についた嘘。
 外傷なんかどこにもない。
 とっさにわたしは、見た目じゃわからない理由として突き指と答えてしまった。

「何してたら突き指なんかするんだよ。母さん、知花に何させてたの?」
「ちょっと落ち着きなさいよ」
「それから幸田、どうして俺を呼ばなかった?」
「それは、社長が秘書さん達に終わるまで連絡するなとおっしゃっていたから」
「それとこれとは別だろ!」
「直紀、知花さんの事、会社の人は知らないのよね? だったら秘書さんの対応はおかしくないんじゃないの?」
「それはそうだけど……」
「それに、知花さんは怪我なんかしてないわ。あなたを驚かせようと思ってわたしがついた嘘」
「嘘?」
「そう」

 悪びれた様子もなく、そう答えるお母さん。

「えっ? だったらどこも痛くないんだな?」

 わたしの体を触りまくる直紀。

「うん。大丈夫」
「良かったーーー」

 気が抜けたようにその場に座り込む直紀。
 ありがとう。
 そしてごめんなさい。

「えっ? だったら母さん、どうして俺を呼んだの?」
「それに父さんも、この時間に家にいるのは珍しいですよね?」
「直紀、お前に話がある。知花さんと結婚しなさい」
「えっ?」
「それから、知花さんとの子どもを大切にしなさい」
「子ども? って、まさか……」
「うん。赤ちゃんが出来たの」
「マジか」
「マジよ」

 その後直紀は、人目もはばからずわたしを抱きしめた。

 
「知花」
「あっ、赤ちゃんがいるんだから、激しいのはやめてよ」
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