【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
鬼龍院くんは信じたかった。
自分が努力して一番を取り続けた栄光を、功績を。
だけどそれはあっさりと彼方に奪われた。
もし彼方〝がなにか努力をして〟一位をとったのなら、鬼龍院くんも素直にその努力を認めていたことだろう。
だがそれは違った。
彼方は紛れもなく天才だ。
許せないのだ、
彼方が〝できるのにしなかった〟ことが。
しかもあっさりと突然順位は抜かされ、鬼龍院くんはどんなに衝撃を受けたことだろう。
自分が一番だと思い続けた。でもそれは幻だった。
「……僕は一番になるように言われてきた。ずっと、ずっとだ。子どもの頃から、ずっと。だけど芸術的センスもなければ運動も得意ではない。だから勉学にすがりついたんだ」