【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
グッと、鬼龍院くんは強く拳を握る。
「そのすがりついたものすら、嘲笑うかのように奪われてしまった僕は、いったいどうすればいいんだ……っ」
答えなんて、誰にも分からない。
答えなんて、ないのかもしれない。
「……すまない。少し、取り乱してしまった」
「鬼龍院くん……っ」
「いいんだ近衛クン、何も言わないでくれ。これは僕の問題であって、君たちに言うべきことではなかった。……さあ、それよりも早くこれを終わらしてしまおう!」
にこりといつもの笑顔に戻った鬼龍院くんは、またパチンパチンとホッチキスをしていく。
まるで彼方とは逆だなと思う。
努力しなかったわけではないが、彼方には才能があった。
(そのせいで彼方は全てを諦めた)
才能がないと自分で認め、鬼龍院くんは努力だけをしてきた。
(そのせいで彼は諦めきれずに縛られている)
そんな彼に、私はなんて声をかければいい?
だけど答えなんて分からないまま、時間だけが過ぎていった……。