【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
▽「あんたなんかに、柚月は渡さない」
「……そうか、僕は負けたか!」
あからさまに空元気だ。
鬼龍院くんはニパッと笑うと、ぎこちなく言葉を続けた。
「き、鬼龍院くんっ」
「なんだね近衛クン?」
いざ声をかけてみたものの、なんて言えばいいのかが分からない。
だけど私はこの時、鬼龍院くんの名前を呼ばずにはいられなかったのだ。
「下手な慰めはよしてくれよ近衛クン? 僕は一番じゃない。それだけが事実であり、それだけが結果だ」
「でも、それでも凄いよ鬼龍院くんは! 私なんてテスト全然だったし……鬼龍院くんは十分……!」
「僕はこんな半端なものを求められてはいない! 鬼龍院財閥の跡取りとして、僕は……っ」
どうやったら、鬼龍院くんを救える……?
「……半端なんかじゃないよ、あんたは」
一歩、彼方が鬼龍院くんに近づいた。