【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。

「うん、鬼龍院くんはたまにお堅いところもあるけど……きっと鬼龍院くん自身にも分かる時が来るよ」



私にはないものを持っていて、それを決して自慢したり利用したりなんてしない。


鬼龍院くんを、私は心から尊敬しているんだ。



「だって、鬼龍院くんが素敵な人だってことは、紛れもない事実なんだから！」



鬼龍院くんは、理解しようとしてくれている。理解したいと願っている。

そのことが嬉しくて嬉しくて、自然と笑顔が溢れた。


「……っ！　君はまた、そんな！」


バッと、鬼龍院くんは勢いよく顔をそむける。

どうしたんだろ？


「鬼龍院くん？」

「い、いや、すす、す、素敵か、そうか……あ、ありがとう近衛クン！　まあ、分かっていたことだがな！　はははははっ！」


高笑いしつつ、その視線はやはり私からそらされている。

あれ、なんだ鬼龍院くんの耳が真っ赤になっているような？



「……柚月、そいつのこと褒めすぎじゃない？」


突然かけられた声は、黙って立っていた彼方の声で……って、なんか彼方凄く不機嫌じゃない？