【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
【chapter:3】
▽「もっと、ドキドキしていいよ」
「ねぇ、柚月」
「なに?」
「……あー、えっと」
「彼方どうかしたの?」
「…………うん、ちょっと待って」
苛立たしげに、彼方は私の隣にいる彼に目を向けた。
「……邪魔だから、どっか行ってくれる?」
とても冷ややかな声だった。
だがその言葉をかけられた彼はなにも動じることはなく、けろりとした顔で「断る!」とハッキリ言った。
彼、鬼龍院くんとこうして一緒に帰るのはもう何度目になるだろうか。
彼方といつも通り二人で帰ろうとしたところ、鬼龍院くんが「僕も一緒に帰っても良いかね?」と声をかけてきて、今はこうして三人で、人気のない廊下を歩いていた。
「僕は近衛クンと共に帰りたい。一色クン、君こそどこかに行ったらどうかね?」
「……俺は、柚月の家と隣同士だから。反対方向のあんたこそ、どっか行くべきだと思うけど」
あ、あー……彼方がこれでもかってくらいに怒った顔してる……。
「え、えっと! それで彼方、私になにか話すことがあったんじゃないの?」
無理に話題をそらすのも、これで数回目だ。