【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「……えっ、ぁ」
「…………彼方?」
戸惑ったような声が聞こえたと思ったら、彼方は片手で口を覆って何故か悶えていた。
「どうしたの!? まさか彼方の方が体調が悪かったんじゃ……」
「……違う、ほんと……待って、落ち着かせてっ」
チラリと手から覗いたその顔はどこか困ったような表情をしていて、唇をキュッと結んでいる。
「えーっと…………大丈夫?」
「大丈夫じゃないよっ……だって、柚月が突然あんなこと……不意討ちは卑怯だよ本当に……ああもう、可愛すぎてワケわかんなくなってきた」
はぁぁあ……と大きなため息をはいて、彼方は自分をなんとか落ち着かせようと頑張っているようだ。
そうして少し落ち着いた後、彼方はチラリと私に視線を向けた。
「……柚月、その……さっきの言葉は、俺を意識してくれてるって思って……いいの?」
「そう、だと思う。前はこんなドキドキすることなかったし……」
「ドキドキ……か」
すりっと頬を撫でられる。
彼方が口を私の耳元に寄せて、囁くように……
「今でも、ドキドキ……してる?」
い、息が当たってくすぐったいっ!