【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「………………はあぁ」
彼方が大きなため息をはくと同時に、私は声がした方向に顔を向けた。
「鬼龍院くん!?」
そこにはまさしく鬼龍院くんが立っていて、いつものきっちりと着込まれた制服の姿とは違い、白いシャツに黒のカーディガンという、ちょっとラフな格好だ。
「やあ近衛クン、こんなとこで奇遇だね? いや、むしろこれは……」
「運命なんじゃないだろうか!!」と拳をグッと握る。
ほ、本当に鬼龍院くんだ……。
「おや近衛クン、いつもと髪型が違うね? とっても似合っているよ」
「ありがとう、ちょっと試しに変えてみてってそれよりも! 何で鬼龍院くんがここに?」
「ん? ああ、ちょっと用事でな……で、一色クンは僕を差し置いてなにをしてるんだい?」
「……二人でデート、邪魔しないで」
「わっ!?」
グイッと彼方の方に体を引き寄せられる。
そんな光景を見た鬼龍院くんは「ふむ」と顎に指を当てて、なにかを考えている様子だ。
「……よし、決めたぞ!」
「柚月、とりあえずここから離れよう。嫌な予感がする」
ポンと手をうつ鬼龍院くんと、急いで立ち上がる彼方。
そして鬼龍院くんはにっこりとした満面の笑顔で、今まさに背を向けようとしている彼方と、まだ状況が理解できていない私に向かって言った。
「僕も君たちに付いて行くことにしたよ!!」
また彼方が私の隣で「はあぁぁ」と大きなため息をついたのだった……。