【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「おお! 見てくれ近衛クン一色クン!!」
「わわっ、鬼龍院くんあんまり人混みのなか行っちゃうとはぐれちゃうよ!」
子どものようにはしゃぎながら鬼龍院くんが見つめるのは、オトギランドのパレードだ。
大通りを可愛らしく装飾された乗り物がいくつも通っていき、その上にはあのオトギ姫と、他にもたくさんのキャラクターたちが踊ったり手を振ったりしている。
「まるで別世界だな……こんな素敵な世界を、僕は今まで知らなかったのか」
「鬼龍院くん、本当にオトギランドには来るのは初めてだったんだね」
「ああ、昔から周りがうるさくてな……子どもらしい遊び場には行ったことがなくてな。だから今日は本当に楽しいんだ!」
キラキラとした乗り物たちが、私たちの目の前を通り過ぎていく。
「……柚月、どうかした?」
気付くと、彼方がどこ心配そうに私の顔を覗いていた。
「え……?」
「……なんか、心ここにあらずって、感じだから」
「そ、そうかな?」
きっとそれは、目の前のパレードのせいだ。
夢のような光景に、ここは現実ではないような……ずっとこの世界にいたいような、そんな感覚になる。