【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「ゆ、柚月さん……っ」
名残惜しそうに私の名前を呟いて、後ろを振り返るセレナちゃん。
一つ一つの仕草が、本当に可愛いなぁ。
「最近は忙しくてゆっくりする時間とかないんだけど、また今度お話しよう、セレナちゃん!」
セレナちゃんがなにを私に言おうとしてるのか凄く気になるけれど、今回は仕方ないと思い『また』の約束を提案してみる。
するとセレナちゃんの顔はパァと晴れやかになり、「分かったわ!」と満面の笑顔が返ってきた。
「柚月さん、じゃあわたしはこれで失礼するわね!」
「うん、またねセレナちゃん」
さて、私も真壁先生の所に行かなければ。
そう思い、セレナちゃんとは逆方向に歩みを進めたのだった。
「あ、セレナちゃんお帰りー! どうだったの?」
「ダメだったわ……いいところで、邪魔が入ってしまったの」
「邪魔って……あー、野沢先生セレナちゃんの邪魔したんですか? もう、せっかくセレナちゃんが近衛さんに声かけたのに!」
数分後、とある教室にて。
セレナと呼ばれた少女はガクリと落ち込み、その隣にいる野沢という教師が、クラスのみんなからじっとりとした視線を受けていた。
「あのなぁ、教師として、他のクラスが文化祭の準備で頑張ってる中、廊下で立ち話してるところを見逃せるわけないだろ。あと月城、お前まだ近衛に言ってなかったのか?」
「そんな簡単に言えたら苦労はしてないわ!」
「そうだよ先生! だいたい、合コンで気になった女の子に声をかけられず、いつも真壁先生にとられちゃう先生にだけは言われたくないと思うなー!」
「お前らなんでそれを!?」
ガヤガヤとちょっと騒がしい教室で、
(でも柚月さん、またお話してくれるって言ってくれたし……次こそは必ず伝えてみせるわ!!)
なんて、その少女は拳を握っていたのだった。