【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「近衛クン、君は僕と離れたいかい? こうして僕がずっと傍にいてあげてもいいんだよ?」
「ずっと……?」
「ああ、だがもし嫌だと思うなら僕を突き飛ばせばいい。前にも言っただろう、もし本当に君が違うと思うならこの手を振りほどけばいいと」
「ぁ……っ」
振りほどく、なんて……
私は……
「そ、そんなことより、その、さっきは怒らせちゃったみたいで本当にごめんなさっ」
「……〝そんなことより〟ときたか」
スッと鬼龍院くんは私から離れ、今度は優しく両肩に手を置いて、私のことを真っ直ぐ見つめた。
「僕は怒ったわけじゃないから、安心してくれ近衛クン」
「怒って、ないの? そっか、よかった」
私のことを安心させるみたいに、頭を二、三回撫でる。
よかった……鬼龍院くん、怒ってなかった。
「……さて、一色クン。何故、柚月くんを放っておいたんだい?」
「あ、ま、待って鬼龍院くん! 今日は私がちょっとだけ文化祭の準備がまだ残ってて、彼方も本当は手伝ってくれるって言ってくれたけど私が断っちゃって、別に私をほったらかしたわけじゃ!」
「柚月クン、僕は今日のことを言ってるんじゃない。ずっと前から、思っていたことなんだよ」
「ずっと……前から?」