【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
セレナちゃんの方を見ると、フキンを掲げてパチンとウインクを一つ。
「こっちはわたしに全て任せてもらってかまわないわ! 柚月さんが驚くくらいピッカピカに磨いててあげるから!」
「セレナちゃん……」
本当に、私一人じゃなにもできない……ダメな人間だ。
「よし! じゃあ花瓶とテーブルクロスは私がとってくるから、みんなは他の準備の続きしてて!」
私が持ってくるのを忘れてたんだから、ここは私が取りに行くべきだ。
そう思ったのだけれど……
「でも近衛さん一人じゃ大変だよ。花瓶は教室なんだよね。それは私が持ってくるから!」
「そうだよ、近衛さんずっと忙しそうだったし無理はしないで。被服室だっけ? そっちは俺が……いや、花瓶の方が重たいだろうしそっち俺が行くわ」
「あら気が利くじゃない! じゃあ私がテーブルクロスね」
「え……だ、大丈夫だよ! 私が」
「いいからいいから! 近衛さんにはこれまでたくさん働いてもらったし、俺たちにも頑張らせてよ!」
「ありがとう……っでも」
「じゃあ行ってくるね。近衛さんはあんまり無理しちゃダメだよ?」
その二人が行ってしまうのを見送りながら、呆然と私はその場に立ち尽くす。
「近衛クン。時には周りのみんなに甘えてもいいんじゃないかい? まあ、僕ならいつでも全力で甘えてくれて構わないがね!」
「……鬼龍院くん」
「みんな君の味方だ……そんな、世界には自分一人みたいな顔をしないでくれ」