【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。



また、彼方は私を頼ってくれなかった。

それどころか、一人で行っちゃうなんて……


「私、用務室に行ってくる!」


一切迷わず、私は彼方を探しに用務室へと向かったのだった。













「あら? あんなに急いで柚月さんはどこに行ってしまったのかしら?」

「ん? ああ、近衛クンは……」


ふと、彼は考える。

(月城クンが行ったらいろいろややこしくなりそうだな)、と。


「近衛クンは……そうだ、喉がかわいたと言って飲み物を買いに行ったんだ」

「飲み物を……あーそう言えばワタシも、なんだか喉がかわいてきたわね。ちょっと飲み物を買いに……」

「君は自動販売機の飲み物は一切口にせず、家から持ってきた特製のブレンドティーしか飲まないと、この前お昼に言っていたじゃないか」

「くっ、よくそんな細かいこと覚えてるわね……まあいいわ、どうせテーブル拭きも終わったことだしこれで失礼させていただくわ。……さっ、はやく柚月さんを追っかけましょう」

「じゃあ次は店内の装飾の飾りつけを頼む」

「まだワタシを働かせる気なの!?」

「え、月城さんもしかして手伝ってくれるの!? 私たちだけじゃ間に合いそうになくて、本当に助かるよ!」


一人の少女が声をあげる。

その少女に続き、次々と月城さんと呼ばれた彼女に向かって言葉が投げ掛けられた。


「おいみんな! あの月城さんが手伝ってくれるってよ! これで百人力だ!」

「いえ、そのワタシ……っ」

「月城セレナちゃんが手伝ってくれる!? 女神とはまさにこのことね!」

「セレナちゃんがいればもう安心ね!」


ここまで言われて引き下がれる彼女ではなかった。


「~っ、ええ、ええそうね! ワタシが来たからにはもう安心……ふふふ、ようやくこのプロ並みの飾り付けスキルをお見せする時が来たようね!!」

「……月城クン、案外ちょろいな」



──……一時間後、とある少女がぐったりとした様子で喫茶店と看板が掲げられた教室から出てきたそうな。


そして「もう腕が上がらないわ……腰が痛いわ……」なんて言いながら、トボトボと自分の教室へと戻っていったそうな。


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