【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「柚月? 柚月?」
ハッと我に返る。
嫌な汗が、頬をつたった。
ああそうだ、彼方に心配をかけないように、ちゃんと大丈夫って言わなきゃ。
言わなきゃ……なのに。
「……かな、た、私っ」
自分の声が震えていた。
もう大丈夫だと言えなくなっていた。
そんな私を、彼方は深刻そうな顔でじっと見つめてくる。
ダメだ誤魔化さないと。
大丈夫だってもう言えないことがバレないように、どうにか誤魔化さないと。
「ほ、ほら、さっさと運んじゃおうよ彼方! 時間もあんまりないし!」
「柚月、待って」
「もう、無駄話してる暇なんてないってば! 早く運んじゃわないと!」
「柚月っ」
「うわ、この段ボール凄く重たいね」
「ねぇ、柚月……っ」
「こっちは私が持つから、彼方は紙袋をお願いね」
「柚月!」
ひときわ大きな声で私の名前を呼ぶ。
だけどその時、別の人物が私と彼方の名前を呼んだ。