【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「……ぁ、そのっ」
なにかを言いかけては、考えるように押し黙る。
彼方がそれを何度か繰り返している間に、時間だけが少しずつ過ぎていって、
気付くと、教室は四人だけになっていた。
「……ゆ、柚月」
「なに?」
ふと名前を呼ばれたので、いつも通り普通の態度で返事をする。
「ちょっと一色彼方、わたしのこと無視しないでれる!?」
「月城クン、静かに」
セレナちゃんの言葉を止めるように、鬼龍院くんが人差し指を立てて静かにと合図を送る。
「彼方、どうかしたの? 早く帰ろう?」
なんだか様子が……
「もう……無理して、笑わないでよ……柚月」
そう呟いた彼方の声は、今にも泣き出しそうだった。
「……どうしたの急に。私、無理なんてしてないよ?」
にこりと笑顔をつくる。
「……お願いだから……嘘を、つかないで」
「嘘なんかじゃ……もう本当に彼方どうしたの? 明日は文化祭なんだし、早く帰ってちゃんと休まないと!」
彼方の手を握ろうとして、その手を逆に彼方に掴まれる。
まるで、絶対に逃がさないと言うように。