【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「かな、た?」
「ちょっと一色彼方! 柚月さんの手を離しなさっ」
私と彼方の間に入ってこようとするセレナちゃんを、鬼龍院が止める。
「どきなさい鬼龍院司!!」
「だから、静かにしているんだ月城クン」
「ワタシに指図しないでくださる!?」
「いいから静かにしているんだ」
低く唸るような鬼龍院くんの声に、一瞬だけセレナちゃんがひるむ。
そのままセレナちゃんは黙ってしまい、鬼龍院くんの後ろから心配そうに私と彼方を見つめた。
「ねぇ、柚月……勘違いだったら、本当にごめん」
少し顔を伏せた後、なにかを決意したように顔を上げ、
「柚月、もう大丈夫じゃないんでしょう?」
ああ、
バレてたのか。
「い、いきなりなにを言い出すかと思ったら……どうだっていいよ、そんなこと」
「否定はしないんだね、柚月」
「……彼方、そんなことはいいからさ……早く、帰ろう?」
「そんなことじゃ、ないよ」