【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
やめてよ彼方。お願いだから。
「ごめん、柚月……本当にごめん。柚月が大丈夫って言えなくなるまで、俺は柚月になにもしてあげられなかった」
「別に私は、彼方になにかしてほしいなんて思ったこと」
「例え柚月が望んでなかったとしても、一緒にいて手を握っててあげることぐらいは、できたはずだ。でも俺はそれをしなかった!」
後悔の入り交じる表情。
少しだけ、彼方の手が震えていた。
「柚月が大丈夫だって言うたびに、本当は大丈夫じゃないってこと気付いてたのに」
「彼方、落ち着いて。ねぇ」
「心のどこかで、本当に悩みごとがあるなら、きっと柚月は俺のことを頼ってくれるはずだって……思ってた。でも柚月はそれをしなかった」
だって彼方に迷惑はかけられないと思った。
「俺は大切な人にも一切頼ってもらえない、そんなやつなんだって思って一人で落ち込んで……」
「彼方ってば……もうやめてよ」
「そんな俺が口を出したところで、柚月を救えるか自信がなくて」
彼方にこの本心を知られることだけは、避けなければと思った。
「柚月の心に踏み込んで、もしこのまま柚月が俺のことを見てくれなかったら……柚月が俺のことを、頼りない俺のことをもう必要ないって言われたらどうしようって怖かった!!」
本心を知られてしまえば、きっと彼方は私のことを嫌いになると、思った。